この旅は、想像以上のスケールで続いていた(クジラ夜の街「夢を叶える旅」)

“ファンタジーを創るバンド”

彼らは、彼ら自身をそのように表現する。その言葉は、今作でも揺るがない。

ライブのSEとしても使われいるM-1「幸せのかたち(Prelude)」は、”START THE FANTASY”という言葉から始まる。M-2「超新星」は疾走感あふれる、旅のスターターともいえる楽曲。”最後に笑うのは僕だ”という歌詞が印象的で、熱く固い意志の表れである。M-3「あばよ大泥棒」は振り付けがライブでも人気の楽曲だ。軽快なテンポに乗せて、心を盗んだ大泥棒はあっという間に姿を消していった。続くM-4「ここにいるよ」では、”ここにいるからね/触れられなくっても/君の心を駆け巡ってるぜ”のフレーズが。M-3、M-4の流れから、まるで大泥棒からのメッセージとも受け取ることができる。

順調に思えた旅の状況はここで一変する。M-5「Holmes」では、名探偵の名を借りつつ皮肉が込められた歌詞が突き刺さる。Vo. 宮崎一晴の七変化する歌唱も必聴である。立ち込めていた暗雲を切り裂いたのは恋心であった、M-6「王女誘拐」。Gt. 山本薫が繰り出すギターのフレーズが、壮大な誘拐計画の幕開けを想起させる。M-7「EDEN」で、旅を通して見つけたひとつの答えが示される。”しあわせは人それぞれ/僕ら行き着く時は独りぼっちさ”。それに気づいた後も、終わりではないだろう。ある意味割り切って、さらにスケールの大きな旅でも怖れることなく出ることができる。

彼らの夢を叶える旅は、夜の街を超え、時には惑星を超えていく。そして、それはこれからも続いてゆく。私たちは、彼らの加速する勢いに置いていかれないようにするだけである。

 

アルバムはこの後、3曲分のライブ音源が収録されている。彼らのファンタジーを垣間見ることができるカットとなっているので、最後まで聴き逃さないようにしよう。

アルバムの最後に笑っているのはあなただ。

 

■クジラ夜の街

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■3rdアルバム「夢を叶える旅」

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(文 サコンモトキ)